埼玉建築設計監理協会の法人化30周年を機に始まった卒業設計コンクールは、今年も埼玉会館にて4月19日から25日までの1週間にわたり開催されました。
今年で10周年を迎えた今回は、多くの企業・団体の協力があったほか、共催・協賛団体による賞も増え、学生にとってもより魅力的なコンクールになったのではないでしょうか。そんな中、9 大学11 学科から27名の参加をいただき、会場いっぱいに力作が展示されました。
都市や建築デザインにもICT革命時代にふさわしい斬新な発想が求められている。そのような中、新しい世紀の第一線で活躍が期待される建築系学生の能力向上,育成を図る目的で、次代を先取りした意欲ある作品を広く募集し,若い学生達の考えた創造価値と熱意を奨励し、また一般の方々にアピールを行う。
対象 大学建築系学生卒業設計作品
賞 最優秀賞:1 作品 優秀賞:2 作品 審査員特別賞:3 作品 埼玉賞:1 作品 住宅検査センター賞:2 点
総合資格学院賞:1 点
作品展示 平成22 年4 月19 日~平成22 年4 月25 日(埼玉会館 第3 展示場)
審査 平成22 年4 月25 日
表彰式 平成22 年4 月25 日(埼玉会館2 階 特別食堂)
学校名・会社名 | 氏 名 |
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芝浦工業大学(審査委員長) | 教授 衣袋 洋一 |
同上 | 教授 菊池 誠 |
日本工業大学建築学科 | 教授 小川 次郎 |
東洋大学建築学科 | 准教授 篠崎 正彦 |
東京理科大学工学部建築学科二部 | 准教授 山名 善之 |
東京電機大学未来科学部建築学科 | 教授 山本 圭介 |
工学院大学工学部建築学科 | 教授 倉田 直道 |
武蔵野美術大学造形学部建築学科 | 教授 宮下 勇 |
日本大学生産工学部建築工学科 | 教授 川岸 梅和 |
ものつくり大学建設技能工芸学科 | 教授 大島 博明 |
埼玉県都市整備部建築安全課 | 課長 能見 正 |
さいたま市建設局建築部営繕課 | 課長 齋藤 常三 |
(社)日本建築学会埼玉支所 | 幹事 樋口 和夫 |
(社)日本建築家協会JIA埼玉 | 代表 三浦 清史 |
(社)埼玉建築士会 | 副会長 増谷 治郎 |
(財)さいたま住宅検査センター | 部長 岩崎 宏 |
㈱大林組設計本部設計部 | 部長 賀持 剛一 |
氏 名 | 役 職 |
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桑子 喬 | 会 長 |
高岡 敏夫 | 相談役理事 |
片渕 重幸 | 相談役理事 |
田中 芳樹 | 副会長 |
長谷部常美 | 副会長 |
■県内建築系学生奨励事業特別委員会 | |
井上 忠孝 | 委員長 |
山田 慎一 | 委 員 |
高梨 久雄 | 委 員 |
金子 信弘 | 委 員 |
松崎 峰夫 | 委 員 |
徳永 茂 | 委 員 |
村山 隆之 | 委 員 |
木川 元守 | 委 員 |
(主催) (社)埼玉建築設計監理協会
(共催) (社)日本建築学会埼玉支所
(社)日本建築家協会JIA埼玉
(社)埼玉県建設業協会
(財)埼玉住宅検査センター
(協賛) (社)埼玉県建設業協会
(財)埼玉県建築住宅安全協会
総合資格学院
(賛助) 各種団体、企業
(後援) 埼玉県、さいたま市、テレビ埼玉
(社)日本建築学会 (社)日本建築家協会JIA埼玉 (社)埼玉建築士会 (財)さいたま住宅検査センター
(財)埼玉県建築住宅安全協会
総合資格学院 大宮校 越谷校 川越校 ㈱大林組 大成建設㈱ スミダ工業(株)
大野建設㈱ ㈱田中工務店 柏木建設㈱ 吾妻工業(株) (株)佐伯工務店 ㈱八洲電業社 ㈱蓮見工務店
生和テクノス(株) (株)サンプラント 大和リース(株) TOTO(株) 松坂屋建材㈱ ㈱アーバンソイルリサーチ
㈱東京黒板製作所 ナブコシステム㈱ ピタコラム工法協会
賞 | 氏 名 | 学 校 名 作 品 名 |
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最優秀賞 JIA 賞 |
三浦 雄斗 | 東洋大学工学部建築学科 残し、つながる |
埼玉賞 | 須藤 裕介 | 日本大学生産工学部建築工学科 マチホテル |
優秀賞 住宅検査センター賞 |
中澤 政文 | 日本工業大学工学部建築学科 貫く長い塀 |
優秀賞 総合資格学院賞 |
西島 要 | 東京電機大学工学部建築学科 自由に延びる建築は群れを成す |
審査員特別賞 オーストラリア賞 |
清水 信吾 | 日本大学生産工学部建築工学科 季節とともにかわる建築 |
審査員特別賞 | 廣瀬 理子 | 武蔵野美術大学造形学部建築学科 ダムトショカン |
審査員特別賞 | 福田 天太 | 武蔵野美術大学造形学部建築学科 茨城県石岡市上青柳地区における屋外展示 |
住宅検査センター賞 | 竹下 悦子 | 芝浦工業大学システム工学部環境システム学科 そこに住むこと、みなで住むこと |
総合資格学院賞 | 中島 彩 | 芝浦工業大学システム工学部環境システム学科 築きの土地 |
奨励賞 | 鈴木 英明 | 芝浦工業大学システム工学部環境システム学科 屋根を植える |
奨励賞 | 篠原 武史 | 東洋大学工学部建築学科 THE WORLD IS YOURS |
奨励賞 | 若山 範一 | 東洋大学工学部建築学科 Walk Long Wall ―痕跡を残して― |
奨励賞 | 内田 卓 | 日本工業大学工学部建築学科 まちのひだ |
奨励賞 | 平山 義剛 | 日本工業大学工学部建築学科 野鳥の巣、ヒトの巣 互いの存在を感じる空間 |
奨励賞 | 宮越 真央 | 工学院大学工学部建築都市デザイン学科 あみめいろ ―現在地と目的地の間― |
奨励賞 | 増岡 慶彦 | 工学院大学工学部デザイン学科 “Green×Grass×Grow 3G Station ~「街の遺産」と繋がる駅~ |
奨励賞 | 山田 善紀 | 工学院大学工学部建築都市建築学科 Skip Structure Building ―建築を家具のように使う― |
奨励賞 | 小林 賢太 | 東京理科大学工学部Ⅱ部建築学科 教室×都市×広場 |
奨励賞 | 石飛 昌平 | 東京理科大学工学部Ⅱ部建築学科 たくさんの“カッテグチ” |
奨励賞 | 佐藤 元樹 | 東京電機大学工学部建築学科 都市に挿入された地形 |
奨励賞 | 鈴木 真美 | 東京電機大学理工学部建設環境工学科 交わり―軽費老人ホームにおける可能性― |
奨励賞 | 谷島 冬美 | 武蔵野美術大学造形学部建築学科 あの場所のはなし |
奨励賞 | 高津 夏子 | 日本大学生産工学部建築工学科 川の記憶 ―水と親しむ集合住宅― |
奨励賞 | 反町 直貴 | 日本大学理工学部海洋建築工学科 Honeycomb Tube Architecture -新たな建築システムへの挑戦- |
奨励賞 | 宮本 哲 | ものつくり大学建設技能工芸学科 図書館のたまご ―想像から創造へ変える場所- |
奨励賞 | 仁田 香織 | ものつくり大学建設技能工芸学科 和紙 ~伝統と革新の融合~ |
奨励賞 | 小佐見正延 | ものつくり大学建設技能工芸学科 人が集まる ~僕にとっての日常~ |
テーマ:浪速型コミュニティ深構築
敷地は、2006 年に取り壊しになった大阪、下寺住宅跡地です。この場には大阪の育んだコミュ二ケーションツール「出し家」が存在していました。
しかし・・・失われた。出し家の魅力を「内側から外に出る自分らしさ」として、空間手法として蘇らせます。そして、住民の自分らしさ同士がお互いに繋がり合う「連鎖型住居スタイル」を用いた住まいの集合体を計画する。
私は、現代の非常に荒んだコミュニティ問題の生み出す団地環境。そこに、何度も足を運び、肌で感じた大阪の人々の接し方・住らし方を深構築して打開策としたい。
商店街を一つの大きなホテルにします。
街道の宿場町として栄えた町の記憶を呼び覚まし、モータリゼーションにあった宿場として商店街とホテルを共存させた新たなコミュニティモデルとして再構築します。
時の流れの中でうつりゆく街並みの記憶を少しずつ残し、後世に伝えていく建築です。
松代には、昔から人の身長より少し高く建物よりもずっと長い塀が数多くある。そのヒューマンスケールと都市的なスケールを併せもった塀を建築の軸として取り込み、塀と松代で多く見られる要素で空間をつくりだす。複数の建物を貫く塀によって空間的なまとまりがつくられ、松代全体に張り巡らされた塀や武家門、町並みとともに新たな城下町の中心をつくりだす。
どこか自然物のように、人間の手では制御しきれない部分が残り続けるような建築をつくりたい。
いくつもの自由な方向に延びる建築が群れを成すことで、一つの建築をつくることを考える。
建築と建築が複雑な相互関係を持ちながら空間を作っていくような状態。そうしてできた建築は、互いに影響し合いながら場所ごとに想像以上に異なった環境を生み出していく。
様々な距離感の中で、異なった人々の生活するシーンが絡み合うように地上から100m上空まで続いていく。
休耕地に田園風景を取戻し、その風景とともに変化する建築の提案。
休耕地に都市住民のための一時的な住居を計画し、都市住民と地域住民とが一体的に稲作を行うことにより、田園風景を取戻す。そして、田園風景が四季の中で変化していくように、この建築も稲作に寄添うことによって季節の変化をとげる。
ダムの寿命は100年といわれている。寿命を迎えたダムは山の中に取り残され、ただの大きなコンクリートの塊となる。
北九州に築90年のダムがある。このダムはあと10年で水を貯める役目を終える。そこに、新しく第三国会図書館を作り、日々発行されている出版物をダム湖の中に蓄積していく。ダムは、水ではなく、「本を貯めるダム」に生まれ変わる。
今回、敷地に選んだのは茨城県石岡市、上青柳という地区であり茅葺き民家や棚田、里山を今でも多く残す田園地区である。
茅葺き屋根だけでなく、さらにこの地の美しさを伝えられるものを作る事が出来る可能性と魅力を感じたのが理由である。
この地の特徴として筑波山とそれを臨む事の出来る台地、それを囲む広い棚田や里山とたくさんの要素を持っている。
それらを使い、この地の美しさや良さを演出する装置を制作した。
みなが助け合い暮らしていく小さな村をつくる。
以前は子供を少し預かってもらうだとか、お互いに困った時は助けてもらえるようなご近所さんとの付き合いがあったが、現在はみなが自分のテリトリーに籠り、隣人のことすらよく知らない。
豊かに暮らす上で、ご近所付き合いは必要である。小学校と周辺の住宅、商店や診療所を合わせ、小さな村を再構築する。ここには自然と人が集まり、お互いを知り、繋がっていくきっかけが散りばめられている。
日本の食を影となり支え続けた築地市場が今、変革を迫られ消えようとしている。築地市場が移転することにより、これまで築かれてきた場内市場と場外市場の関係は途切れ市場が開場した当時から市場とともに生きてきた職人達の活気ある姿を見る事が出来なくなってしまう。この市場には私たちが学ぶべきものがまだたくさん残されているのではないだろうか。築地市場が消えるのはもったいない。大屋根を組み、吊り構造で空間をつくっていくことで、市場を使いながらにして再開発していくことが出来る。世界の人々から注目され、愛される市場を次の世代へと贈る提案。
審査委員長 衣袋洋一
何を残し何を新たに創るかによって、地域と関係した「建築単体」としての魅力創造及び建築群としての地域・共同体の「都市」の新たな魅力創造、地域の活性化の魅力創造が卒業設計の目的である。
学部の課題設計は共通課題に対しての問題解決であり、主たるものは建築設計のためのリテラシー(読み・描き・そろばん的)である。基本は建築機能、スケール感の把握、空間・形態の美的追求と素材・色彩・光等が及ぼす質感・効果等の追求を行い美しい「空間・形態」を導くことが目的である。
通常学部等で行われている課題設計は、内容が与えられ、同じテーマに取り組み解答を導き出すことであり共通認識のもとに取り組む。卒業設計は、自分で場所、テーマ等を決め、一人ひとりが違った解答を導き出すかである。前者には理解するための共通のフィルターが用意されており、図面及び「言葉力」によるプレゼンテーションが成立している。後者は共通のフィルターは用意されておらず、理解させるための「基盤」を自分で用意しなければならない。
今回、個別の講評は控えたい。最優秀賞、優秀賞は内容的にも優れているが、上記の評価は大きく影響していると思います。選ばれなかったからといって内容が劣っていると理解しないでほしい。コミュニケーション能力のひとつであるプレゼンテーション能力が足りなかったことを反省し、努力をしてほしい。最優秀賞を受賞した諸君はさらなる努力をし、大きく建築界に羽ばたくことを期待します。
参加された学生諸君ご苦労様でした。本卒業設計コンクールの準備等々に携わった(社)埼玉建築設計監理協会の会員の皆様に対して感謝の意を表します。ありがとうございました。