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平成19年度卒業設計コンクール報告

平成19年度卒業設計コンクール報告

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出展作品・審査結果

最優秀賞・埼玉賞 山岸 由佳  :  「Subako in Urawa」
            -Habitation place of young artists-
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最 優 秀 賞 柳沢  治  :  「Worklive Office」 詳細へ
優 秀 賞 木元 洋佑  :  「もう一度つながりを求めて…」 詳細へ
審査員特別賞 長門 宏明  :  「Schizo city スキゾシティ」
川田 真理絵  :  「ヴァルールのような」
高橋 千菜見  :  「そこは都会にできたあたらしい散歩道」
堀尾 哲弥  :  「イナバウアーとお花の織り成す緊急時シェルター」
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参 加 賞 大槻 陽平  :  「佃島物語 1964~20××」
            ~アーティストと住民が育む東京の残すべき姿~
須永 雄一郎  :  「ココロノイバショ」
大野 裕司  :  「おもいはかさなる」
阿久津 信康  :  「昔ながらの醤油工場の再生 
            -佐原・与倉屋のまちおこしー」
林  龍一  :  「21世紀のギョコウ」 ―回遊する漁港の提案―
木村 早也香  :  「Leaf Atelier」
加藤 千晶  :  「When You Try to Walk」
西村  萌  :  「[RE-]verse×[RE-]birth
            ~都市における自己認識の空間~」
今井 久美子  :  「HIGH WAY CITY」
岡崎 幹史  :  「ゆりかごのざわめき」
篠原 明理  :  「ポケットしかない夏・・・」
土井 健雄  :  「space bank」二重の空間性はホテルを再構成する
鹿野 智章  :  「アンテルコンタンポラン」 “Inter Con-temporaiin”
神田 貴美  :  「重なるまち」
小林 豪士  :  「おおきないえのちいさなむら」
松本 真純  :  「A inside out space with steps」
            ~段差を使用した内部空間の設計~
須田 修二  :  「TINY HOUSE COLONY」
(順不同)
 

受賞作品

表彰式

平成19年4月22日(日)には、埼玉会館にて受賞された生徒および先生方に出席をいただき表形式が行われました。ました。


最優秀賞の山岸さん、柳沢くん

山岸 由佳  共栄学園短期大学住居学科

「Subako in Urawa」-Habitation place of young artists-

この企画は、浦和に若手アーティストを育む街=『巣箱』をつくろうという計画である。若手アーティスト=まだ無名のアーティストが、美術館兼工房であるこの『始まりのmori』を拠点として活動する。そう、ここはアーティストが飛躍するための舞台となるのだ。『始まりのmori』での活動を経てアーティストが成長していく。そして『始まりのmori』からの独立。

昭和初期、浦和で多くの芸術家が活動し『画家の街』と呼ばれていた芸術の歴史がある仲町に、それぞれアトリエを構える。それが『subako』である。『始まりのmori』『subako』そしてこの二つを繋ぐ役割のインフォメーションやショップなどを通して、かつての芸術の街の活気を取り戻そうという狙いがある。


柳沢  治  芝浦工業大学環境システム学科

「Worklive Office」


木元 洋佑  東洋大学工学部建築学科

「もう一度つながりを求めて…」

私が提案する計画は社会から一度離脱してしまった人がもう一度社会とつながるための生活の場の提案である。刑務所や少年院から出所し、新たな人生にかけようと誓いながらも行き場がなく、社会に対して強い不満を持った人たちが共同生活をしながら社会復帰をともに促進していく更正施設を考える。


長門 宏明  芝浦工業大学システム工学部 環境システム学科

「Schizo city スキゾシティ」

高密度、高層化し秩序化される現代社会。都市というグリッドパターンに秩序的に建築が成長するために、建築は箱物と呼ばれるようになってしまった。そのような箱物には人々が求める人間的な行為、欲望は見られない。秩序の中に存在する非秩序には人々の求める人間的な行為、欲望が渦巻き、錯綜している。それは日々の社会からの逃走である。


川田 真理絵  武蔵野美術大学造形学部建築学科

「ヴァルールのような」


高橋 千菜見  東京電機大学工学部建築学科

「そこは都会にできたあたらしい散歩道」


堀尾 哲弥  ものつくり大学建設技能工芸学科

「イナバウアーとお花の織り成す緊急時シェルター」


平成19年度 第7回卒業設計コンクール 総評

審査委員長:日本工業大学 伊藤 庸一先生

恒例の埼玉建築設計監理協会主催・卒業設計コンクール第7回の作品が07年4月17日~22日のあいだ埼玉会館に展示され、22日の午後1時から公開で最優秀賞等を選考する審査が行われた。

改めて主旨を紹介すると「都市や建築デザインにもIT革命時代にふさわしい斬新な発想が求められている。そのような中、新しい世紀の第一線で活躍が期待される建築系学生の能力向上、育成を図る目的で、次代を先取りした意欲ある作品を広く募集し、若い学生達の考えた創造価値と熱意を奨励し、また一般の方々にアピールを行う」である。そして、応募作品の中から最優秀賞1作品、優秀賞2作品、および、埼玉を題材にした優れた作品に埼玉賞として1作品、これらの選にもれたがとくにアイデアや創造性に優れた作品に審査員特別賞として3作品を選考し顕彰するとともに、最優秀賞には海外研修旅行助成金として20万円相当(今回は最優秀賞が2名となり特例で15万円とした)、優秀賞には3万円相当、埼玉賞には10万円相当の副賞が贈られる。

主催は埼玉建築設計監理協会であるが、日本建築学会埼玉支所、埼玉県建設業協会、埼玉住宅検査センターに加え、日本建築家協会JIA埼玉、総合資格学院の協賛、埼玉県、テレビ埼玉の後援を受けるほど幅広い支援を受けており、埼玉卒業設計コンクールの定着ぶりをうかがわせる。これも、埼玉建築設計監理協会のご苦労の賜物である。聞くところによれば、このコンクールで最優秀賞に選ばれた卒業生は、大学院に進んでより建築デザインの研修に励んだり、著名な建築家のもとで実践的な修行を行ったりしているそうだ。埼玉卒業設計コンクールが建築家への登竜門の一つになりつつあることは喜ばしい限りである。

今年度は以下の25点の作品が9大学から寄せられた。審査は公平を期すため、参加大学および日本建築学会埼玉支所、埼玉県建設業協会、埼玉県、埼玉新聞ほかから特別審査員として各1名が各2点、埼玉建築設計監理協会から一般審査員として数名が各1点を持ち点とし、優秀賞作品候補として3作品、埼玉賞候補として3作品、審査員特別賞候補として3作品を選考し、単純計算でそれぞれの候補作品を絞り込む。次いで、優秀賞候補者、埼玉賞候補者に作品の前でプレゼンテーションを行ってもらい、審査員とのあいだで質疑応答を行ったうえで、特別審査委員が最優秀賞、埼玉賞を各1点選び、単純得票で最優秀賞1作品(残り2作品が優秀賞)、埼玉賞1作品を選考する。

ところが今年度は優秀賞候補の得票がほどよく分散してしまった。これは優劣がつけがたいほど応募作品のレベルが向上したともいえるが、むしろ、一歩ぬきんでたアイデア、力量を見つけることができなかったというほうが、当を得ている。上記の応募作品のテーマをみても設計意図が分かりにくいように、コンクールの主旨にある「次代を先取りした・・」作品は少なく、現状に対する妥協的解決や個々人の身近な問題への解答、あるいはこれまで繰り返し出されてきたアイデアの焼き直し、社会的な話題に誘発された思いつきなどが大勢を占めた。そのことが得票の分散や決選投票、あるいは審査員から最優秀賞無しの意見が出るなどの結果になったようだ。

審査会の進行を務める私は審査員の意向を勘案しつつ、主催者と十分協議し、最終的に下記の最優秀賞を2作品(副賞は最優秀賞+優秀賞の折半)、優秀賞1作品、埼玉賞1作品、審査員特別賞候補4作品を選考した。おめでとう。

柳沢君のWorkliveOfficeは東京駅を舞台にした新しい働き方の提案である。東京駅に象徴されるサラリーマン達のオフィス街は働くことに特化された街としてつくられ続けてきた。ダークスーツに身を固めたサラリーマンは、しかし、朝早く郊外から満員電車に揺られて出勤し、ささやかな昼食で一日を乗り切り、夜になるとまたまた満員電車で家路につく。たまの花金に居酒屋でうっぷんを晴らしては、定年まで勤勉に働き続ける。こうした働き方への疑問を、働くに楽しむを加えた、あるいは楽しむや自由な生き方と働くが同等の重みを持つ、さらには今風の学生の考えともいえる楽しむに比重がかかった楽しみながら働くライフスタイルの提案である。丸の内側の東京駅は風景として保存し、線路上空から八重洲側の高層ビル街にのびるワークプレイスをデザインしていて、評価を得た。

山岸君のSubakoin Urawaは最優秀賞と埼玉賞のダブル受賞となった。埼玉賞には、朝霞の自然再生をテーマにした須永君のココロノイバショ、川口の商業施設などを組み込んだマンションをテーマにした神田君の重なる町が候補にあがったが、山岸君のアイデア、力量が群を抜いた。コンセプトの分かりやすさや表現がよく、最優秀賞も獲得した。しかも短期大学なので、2年間の成果が4年制を圧倒したこともあわせ、評価したい。テーマは、浦和に若手アーティストを育てる場所、Subakoの提案である。若い人が集まり、育っていくことが町の持続、あるいは活性化の基本であり、テーマ性も評価された。浦和は古くからの狭小住宅地と新しい再開発高層ビルの2面を持つが、山岸君は森の広場をデザインし、緑の少ない浦和に潤いの場をも提案していて、これも評価された。

木元君のもう一度つながりを求めては、神宮前を舞台に、刑務所や少年院を出た若者が社会復帰をしていくための厚生施設の提案である。疎外感を感じている初期段階から仲間と活動を共にする中期、町の人と交流する後期を経て、社会に復帰していくプロセスを空間化している。建築計画の確かさや建築技術のレベルは高く、表現も評価された。

最優秀賞、優秀賞の3作品は、着想、建築計画、建築デザイン、表現に優れた作品であり受賞となったが、卒業設計のテーマを何にしようか考えてこのテーマにした、あるいはこのテーマにふさわしい場所を探してここを設計対象地にした、などのコメントが聞かれるほど、次代を先取りしたテーマでもなく、その土地のもつ場所性、ポテンシャルからテーマが考えられたわけでもない。それだけ学生を取り巻く環境が平穏であり、また彼らに明確な人生像がみえない時代なのかも知れない。中越、インド洋沿岸、玄界島、ジャワ島、能登と身近な災害が続くなか、帰ろう山古志・・や・・緊急時シェルターなど、災害対策、災害復興はもっと追求されてよいテーマであろう。自然復元を意図したココロノ・・、生き物との共生を目指したゆりかごの・・、今回はテーマ化されなかったが農業の持続、高齢社会なども日本が直面してる大きなテーマである。ぜひ、次代を先取りしたテーマに取り組んで欲しいと願っている。

実施概要

対象     大学、短大建築系学生卒業設計作品
賞      最優秀賞:1作品 優秀賞:2作品 審査員特別賞:3作品 埼玉賞:1作品
審査     平成19年4月22日
作品展示   平成19年4月17日~平成19年4月22日(埼玉会館 第3展示場)
表彰式    平成19年4月22日(埼玉会館 第3展示場)
審査委員長  日本工業大学 伊藤庸一先生

一般審査員

協会会長         桑子  喬
協会副会長       大川 紀夫
  〃           梶  芳晴
相談役          高岡 敏夫
  〃           片渕 重幸
特別委員会委員長・副会長  田中 芳樹
特別委員会委員      古橋 一廣
                 清野 守夫
                 金子 信弘
                 高梨 久雄
                 原田 省吾

主催・協賛・後援・賛助

(主催) (社)埼玉建築設計監理協会
(協賛) (社)日本建築学会埼玉支所
      (社)日本建築家協会JIA埼玉
      (社)埼玉県建設業協会
      (財)埼玉住宅検査センター 総合資格学院
(後援) 埼玉県 テレビ埼玉
(賛助) 下表参照

賛助企業(順不同)

(社)埼玉県建設業協会  (社)日本建築学会 (株)竹中工務店  戸田建設(株) 大成建設(株) スミダエ業(株)
大野建設(株) 柏木建設(株) (株)田中工務店 生和テクノス(株) (株)サンプラント (株)アーバンソイルリサーチ
(株)オキナヤ (株)佐伯工務店 (株)UDK 太陽工業(株) (株)八洲電業社 (株)蓮見工務店 大和工商リース(株)
ロンシール工業(株) 東陶機器(株) 吾妻工業(株) (株)東京黒板製作 (株)INAX 三協立山アルミ(株) (株)大林組
(財)さいたま住宅検査センター YKKAP(株) 総合資格学院(大宮校、越谷検、川越校) 三和シャッター工業(株)
服部地質調査(株)